オンライン富士登山という挑戦

(2020年7月1日)太子舘ガイドそして太子舘が一丸となって、この「オンライン富士登山」を作り上げました。
今晩、そのツアー第一弾がスタートとなります。

「オンライン富士登山」は、ZOOMを使い自宅から気軽に参加できる富士山登山です。富士山の写真(ガイド撮影)を多用し、ガイドが自ら解説します。実際に富士山に登っているかのように感じてもらう1時間30分の富士山擬似登山ツアーです。

7月1日の富士山の開山日という節目の日に、これまでの経緯などをを簡単にまとめてみたいと思います。


そもそもこの開山日は、本来であれば富士吉田市で盛大に開山式が執り行われ、毎年全国ニュースとなるものです。

今年は新型コロナウィルス感染症による影響で、5月上旬には富士山が開山しないことが決まりました

終戦直前の1945年の夏ですら、閉山は行われず誰かが登っていた富士山です。
その富士山が開山しないという未曾有の事態。

始めはガイド有志によるオンラインZOOM飲み会での近況報告でしたが、それぞれが持ち合わせていた「何かできないか」という思いがいくつかのプロジェクトチームという形となり具現化しました。

「オンライン富士登山」はその中の一つです。

閉山によるダメージは、ガイド組織としても大きなものです。
ガイドの収入減、ガイド組織の収入減、1シーズン空くことによるガイド技術の低下(特に2年目ガイド)、毎年濃密に過ごしていた富士山ガイドシーズンが無くなる寂しさ等。
ガイドがガイドできないというのは、どうにもやるせないものです。

これらの問題を解決、あるいは緩和させるために考え出されたのが「オンライン富士登山」です。

実際に5月中下旬に何度かZOOMを使ってデモツアーを行いました。
やってみて「これはアリだ」という感覚がガイド内で広がり
私はやっているうちに「これはいける!」という確信に変わりました。

オンラインツアーの成功の鍵は、質の高い視聴覚素材を土台とした、特別(限定)感・双方向性と、それを最大限演出する構成とガイド力です(参照「オンラインツアーの可能性」)。
そのいずれも、太子舘ガイド組織は持ち合わせています。

何より、やっているととても楽しいです。ガイドをするのも楽しいですし、お客さんに楽しんでもらう仕掛けを考えていくのも楽しいです。
たぶんこれはガイドの本質です。

作っているうちに様々なアイデアも出てきました。
グーグルストリートビューの360度写真を使った紹介、ご来光動画、天気分岐シナリオ(ツアー日の天気予報を見て、悪天なら悪天の写真を見せる)。

雨具の有無を聞いて、持っていない人には投票機能でクイズをして
「A:買う、B:レンタルする、C:ガイドさんに黙って登る」でCを選んだ人は強制退出するというゲームっぽいのもできるじゃん(爆笑)
みたいな展開はいつものシーズンを思い出すようで楽しいものです。

たくさんの試行錯誤を経て、不要なものを削ぎ落としてスタンダードスライドと一つの形ができあがりました。

今晩のツアーが、初の本物のお客様を迎えたツアーとなります。
ただ、もちろんこれがゴールではなく、スタート地点に過ぎません。
増やしたいスライドもたくさんあるし、投票機能も増やして双方向性をもっと出したいし、効果音を取り入れて臨場感をアップさせたいし、ZOOMならではのガイドトークももっと磨きをかけたいと、付け加えたいことが山積みです。

始めは、私ともう一人のベテランガイドがメインでツアーを行いますが、順次他のガイドもオンライン富士登山を行うようになっていきます。

当たり前ですが、ガイドの数だけガイディングがあります。参加するお客さんによっても、ツアーの形は生き物のように変わっていきます。スタンダードスライドを作ったのは自分ですが、スライドやガイド内容が、どのようなアレンジを加えられていくのかを考えることは非常に刺激的です。アレンジという枠を超えて、全く別物になることもあるでしょう。

本日産声をあげるオンライン富士登山がこの夏、どのように進化をしていくか楽しみでなりません。
2020年は忘れられない富士山シーズンとなりそうです。

富士山吉田口  八合目太子舘ガイド 藤本 賢司

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